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プロデューサー・佐久間正英が長きに渡る音楽業界での活動の末に辿り着いたレコード会社、「CircularTone Records」とは?設立に込めた思いを、nauの小寺が訊いた。

佐久間正英、新たに設立したレコード会社「CircularTone Records」について語る

小寺修一(nau):そもそも僕らがnauを始めた時に、佐久間さんが、ライターの四本(淑三)さんに「nauって、何?」と聞かれていたそうで(笑)。

佐久間正英:四本くんがちょうどnauのことに触れてたもので、気になって。

小寺:興味を持っていただけるんだったら嬉しいな、って思っていたら、「話を聞きたいって言ってるよ」と言われたので、一度、お会いさせていただいて。その時に佐久間さんからレコード会社の構想を聞いて、「あ、これはすごいな!」と思ったんですね。しかも、nauが目指してるというか、僕自身がこういうことをやりたいな、と思ってたことと方向が一緒だったので、すごく勇気づけられたというか。その後、CircularTone Recordsを設立されて。

佐久間:5月末に会社を立ち上げて、実際には6月から動き出しました。

小寺:今までの業界慣習みたいなものを吹っ飛ばすというか、完全にない状態で始まってますよね。

佐久間:もっとシンプルに、アーティストの権利をもっと守れる形っていうのは実は簡単にできるんじゃないかな、と思って。単純に言えばレコード会社にとって音楽は商品で、音楽を仕入れる、その掛け率の問題なんですよ。僕らは純利益の50%をアーティストに渡しますよと言ってるけど、それは50%で仕入れて売ってるってことであって、「50%も渡すなんてすごい」っていうことでもないんじゃないかな? と思って。そりゃ、30%におさえられたらそのほうがもちろんいいとは思うけどね、会社としては。

小寺:でも、相手が物だったらいいけど、人が暮らしてるわけだから、半分くらい渡さないと……。

佐久間:本当は半分は多いとは思うんですよ、実は。でも話としては、「山分けね」っていう(笑)。いちばんシンプルだし。

今の状況では、若い子たちが夢を持って、真剣にプロになろうとは思えない

佐久間:メジャーレーベルの場合、僕の知ってる範囲ではアーティスト印税というのは1%、多くて2%。海外だとそれが11%〜14%とか。日本の場合、言ってしまえば極端に少ない。それが現実にどういうことかって計算してみると、2500円のCDを売ったとして、そこからジャケット代を引いて2250円。2250円のうちの20%は在庫分というか、返品の可能性があるので80%で計算される。

小寺:一律ですよね。定価の10%は大体ジャケット控除と言われるものが引かれて、さらに数は出荷枚数の80%。20%は返品を想定している、という設定になってるんですね。

佐久間:それで単純に考えると、1枚売れて1800円。それの1%で18円がアーティストに行く。そのCDが1万枚売れた時にアーティストに入るのは18万円で、4人編成のバンドでひとり4.5万円。しかも、多くても年に1枚しかアルバム出させてくれないと思うんですよ。10万枚売れても45万円、100万枚売れてはじめて450万円で、それでもまともなサラリーマンと同等かちょっと安いくらいだと思うんですね。100万枚のアーティストが450万円っていうのは、それで若い子たちが夢を持って、真剣にプロになろう、って取り組めないんじゃないかな、っていうのがあって。

アーティストや、実際に音楽を作った人たちが原盤権を持つべき

佐久間:僕の思ってる50%っていうのは、アーティスト印税ってことじゃなくて、原盤権もアーティストが持つべきだと思うんです。日本はお金を出した人が原盤を持つんですね。それはなぜかっていうと、たぶん、昔はレコード会社なり、そのお金を出す人が企画して、ミュージシャンを集め、スタジオを押さえて、作って売っていて、それは権利を持っていいと思うんですね。でも今って、ただ形が慣習として残っているだけで、お金を出した人が権利を持つっていうのはむしろ変で。僕の考えでは、仮にお金を出してくれる人がいたとしたら、それはお金を借りることでしかない。たとえば100万円出してくれたとしたら、リクープ(最初の制作費を回収)するまで貸してください。そのかわり、利息は払いますよ、と。

小寺:110万円払えばいいんですよね、一年後に。

佐久間:そうそう。少なくとも銀行の10倍の利息出しますよ、って言ったら、投資として悪くないわけですから。そういう考えでいくと、権利を渡す必要なんかない。

小寺:たぶん、世の中の経済の仕組みでいくと、100万円出して110万円だとすごくいいですけど、レコード会社の中で原盤に100万円出して110万円で返されたっていうと、そんなんあり得ないってなっちゃいますね(笑)。

佐久間:でも、その発想が違うと思うんだよね。じゃあ原盤は誰のものかっていうと、アーティストやプロデューサーや、あるいは関わったレコード会社、作った人みんなで持てばいいことであって。

小寺:レコード会社が悪いわけじゃないんですけど、全部、レコード会社が成り立つためのシステムじゃないですか。僕はそっちの恩恵を受けてきたので、それを否定するわけではないんですけど、あまりに、すべてがそうなってきてて。

佐久間:なぜ今でも(アーティスト印税が)1%か、っていう根拠がないよね。

小寺:レコード会社が原盤権をすべて持っていると、自由に売ることもできるし、ちぎってどっかに混ぜることもできるし、もう売りませんってこともできるし。とにかく自由じゃないですか。佐久間さんのレーベルは、まずミュージシャンが(原盤権を)持つっていうのも素晴らしいし、そうするとみんなが合意したものしかできないし……。

佐久間:みんなが責任持ちやすいと思うんだよね。音を作ることに対して。

小寺:でも、山分けだからって夢のような話かっていうとそうではなくて、利益が1万円しか出なかったら5000円、5人のバンドだとひとり1000円で、それが5000万円だったら1000万円ずつだよっていうのは、お互いリスクがはっきりしてるという意味では本当にわかりやすい。しかもそれを、佐久間さんがちゃんと発言していて。そういう、すばらしいレコード会社だと思います。

Ustreamで公開してアルバム全曲を一発録音という新たな試み

小寺:CircularTone Recordsは、今週(10/30リリース)は、佐久間さんの新しいバンドの、unsuspected monogramのリリースがありますね。

佐久間:そうですね。2年前に、メンバー探しから始めたバンドです。

小寺:レコーディングが一発録りなんですよね。

佐久間:Ustreamで公開して、アルバムを1枚分、11曲、一発録りしました。

小寺:でも、普通に一発録りするとあんな音にはならないですよね。

佐久間:一発録りのためにその前の2日間、音作りを徹底的にやって、Ustream用にミックスもちゃんと作って。

小寺:色んな意味で、ちょっとした奇跡のレコーディングですよね。サウンドも、演奏ももちろんですけど。もうちょっとパンクっぽいバンドとか、荒っぽいスタジオライブでガレージな感じだったら、それこそマイク何本か立ててやればいいと思うんですけど……。

佐久間:いわゆる普通の、本気のレコーディングを一発でやりましたね。

小寺:分離感もありつつ、(一発録りだから)やっぱり全部分離してなくて、くっついてるからその良さがすごく出てますね。これは、世界的にもなかなかないですよね。

佐久間:ないと思いますね。画期的だと思います。

小寺:レコード会社は作るわ、新しいバンドはスタートするわ、レコーディングのやり方は新しいわ……。すごいですよね。

佐久間:そうですね、うん。

小寺:佐久間さんの、2010年代の野望はなんですか?

佐久間:野望は、全然ないですけど、とりあえず自分のバンドを一生懸命やりたいのと、あとはCircularTone Recordsをどうにか、普通の会社にできたらいいなと思います(笑)。せめて零細企業くらいまでいけるといいですけど。

小寺:nauもそうなんですよね。2割っていうのは僕らも、なんともならないんですけど、でも、心意気が見えればいいかなと思っていて、それでみんなが応援してくれているので、がんばりたいなと、思っています(笑)。

このインタビューは2010年10月26日に「nau chan.スペシャル佐久間正英公開インタビュー」として放送したものをもとに編集して記事にしています。放送では佐久間さんが約半世紀にわたる音楽遍歴を語っています。ここでしか聴けない貴重な話が満載です。アーカイブもありますので、こちらもぜひ観てください。

nau chan.#18『佐久間正英インタビュー!』 - USTREAM

今までのレコード会社の常識・慣習にとらわれずにアーティストの権利や環境を最優先に考えた、佐久間正英による「理想のレコード会社」。
「僕らの作り出す音がいつまでも永遠に循環できる様に」との思いから「CircularTone Records」と名付けられた。

『RAINBOW/MOON SMILE』
The d.e.p.
2010年10月23日発売
400円 nauで購入!

プロフィール

The d.e.p.

The d.e.p.のビビアン・スー、佐久間正英、土屋昌巳、屋敷豪太が再び集まりメンバーであるミック・カーン(ex:JAPAN)のガン闘病支援のため約9年ぶりに新曲をレコーディング!サポートベーシストとして根岸孝旨が参加。
この楽曲の売り上げはミック・カーンの家族へ送金されます。

『the mass』
unsuspected monogram
2010年10月30日発売
1800円 nauで購入!

プロフィール

unsuspected monogram

2008年10月。プロデューサー・アーティストである佐久間正英が長年抱いて来た、理想のバンド構想を実現すべく、TheSeesawsやScreamingFrogsとして活動中のギター・ボーカル、若菜拓馬に声を掛ける。一夜にしてバンドの構想・具体性が固まり、数度のオーディションを通して、ドラムに星山哲也、ベースに砂山淳一を加え、エレクトロニクス及びアートワークス担当として佐久間音哉を迎え入れ、構想より1ヶ月後の11月末よりunsuspected monogramとして活動を開始。

『Fall/Mo'mentina』
Cojok
2010年12月07日発売
400円 nauで購入!

プロフィール

Cojok

エレクトロニカ、フォーク、プログレ、クラシック等、様々な音楽を消化し、新たなジャンル「Aco-tronica」(アコトロニカ)を独自に築きあげる。 型に囚われず、寄り添う事もなく、孤高なる音楽で活動し続ける2ピースバンド。
メンバーは、Kco(Voice & Acoustic Guitar)、ASE SATOSHI (Guitars & Computer, Effects)。

『彼女の日常』
hachi
2010年12月17日発売
1800円 nauで購入!

プロフィール

hachi

2001年ピンクパンダーとしてソニーレコードよりメジャーデビューしたハツエが、2004年バンド解散後も音楽活動を続け、2005年からソロとして活動していた『hachi』をバンド形態とした。
現在のメンバーは、ハツエ(Words & Composition, Vocal, Bass)、ユーゾー(Composition, Guitar, Chorus)、シーサー(Drums, Percussion, Chorus)。